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アドリブの本質~頭の中で鳴った音を弾く~

2017 5.16 wed

ジャズピアニストの佐山雅弘さんが教則ビデオでこう語っていました。「プロのミュージシャンでも、蓄積した引き出しから持ってきてアドリブするタイプと、頭に中で鳴った音をその場でアドリブとして弾くタイプがいる」。そして、「頭の中で鳴った音を弾かなければいけない」というチック・コリアの名言を引用して、自分もそのタイプだと強調していました。

私はこの考えに全面的に賛成です。コピーや練習によって蓄積した引き出しの中身をフレーズにするだけでもアドリブとして成立しますし、一流プロミュージシャンでも、あるコード進行でよく使うフレーズ(手癖と呼んだりします)があるのは事実だと思います。引き出しフレーズが多過ぎたり、機械的なフレーズを何度も狙って出しているようなアドリブは、飽きてしまう可能性が高いです。ただ、これはあくまで私の場合で、聴く側の個人差が大きいということも付け加えて起きます。

アドリブが魅力的で歌っていると感じる場合、ミュージシャンはどこか記憶から引き出してきたわけではなく、直前の脳内フレーズを弾いている可能性が高いです。これはプロミュージシャンと会話しても裏付けられています。

ただ、このアプローチは高度な音楽的素養を必要とします。まず、頭の中できれいなメロディーが直前に浮かぶ必要がありますし、それを完璧なソルフェージュ能力で瞬間的に演奏し、フレーズの終わり、あるいは休符のところではさらに次のコード進行に合ったフレーズが浮かんで来るという循環が必要になります。

ソルフェージュというのは、①耳から聴こえた音、脳内で鳴った音、②視覚情報である楽譜、③アウトプットである楽器演奏・発声、この3つの要素を自在に行ったり来たりできる能力、あるいはその訓練のことを指します。ジャズのアドリブで必要なのは①→③の能力です。あるフレーズが脳内で鳴った時、それをピアノならすぐ鍵盤に置き換えたり、スキャットの形でアウトプットする作業ですね。

ライブでもCDでも、ミュージシャンのアドリブをよく聴いていると、頭の中で鳴った音を弾いているのか、どんな風にフレーズを紡ごうとしているのか、少しずつ分かって来ると思います。そうなってくると、ジャズを何倍も楽しめるようになりますね!

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