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メルマガ4 ジャズマンが作ったジャズ・チューン

2017 8.1

今回は、スタンダードの4回目、ジャズミュージシャンが作曲したジャズチューンを中心に紹介します。

●Mighty Five  これまで3回に渡ってスタンダード曲についてお届けしてきました。ちょっと復習すると、1920年代からブロードウェイミュージカル、ハリウッド映画のために書かれた挿入歌と、楽譜販売のための単独曲として出版された歌曲が、スタンダードナンバーとして定着してきました。

 アメリカでは、アメリカン・ポピュラー・ソングという言い方もします。作曲したのは、ジェローム・カーン、アーヴィング・バーリン、ジョージ・ガーシュイン、コール・ポーター、リチャード・ロジャースといったいわゆるソングライターです。ここに挙げた5人は、ミュージカル5大作曲家(Mighty Five)と言われます。

 こういう言い方がされること自体、アメリカでソングライターがいかに尊敬されているかが分かりますね。バーリンを除く4人はすべて伝記映画が残されていて、コール・ポーターは2本もあります。どれも、今観ても大変面白いです。amazonなどで買える物もありますのでご興味のある方は是非。

 今回紹介するのは、ジャズミュージシャンが作曲した曲の中で優れたものが繰り返し演奏されてきてスタンダードとして定着した、アメリカでジャズ・チューンと呼ばれるカテゴリーです。代表的な曲を挙げれば、、Satin Doll(デューク・エリントン)、Round About Midnight(セロニアス・モンク)、Joy Spring(クリフォード・ブラウン)、Recorda Me(ジョー・ヘンダーソン)、Waltz For Debby(ビル・エヴァンス)といったところです。

●エリントンとモンク  中でも、1000曲以上を残しているエリントンは別格で、作曲家と言い切っても良いくらいですが、バンドリーダー、ピアニストとして演奏者の側面もあるのでここに入れました。ほとんどインストゥルメンタルな曲として書かれているところ、リズム的、ハーモニー的に最初からジャズ的に書かれているところが、上記のソングライターが書いた曲とは明らかに違います。Satin Doll以外にIn A Sentimental Mood、Solitudeなど、挙げたらキリがありません。素晴らしい組曲もたくさん残しています。エリントンの作曲のパートナーで、ため息が出るほど美しい曲をたくさん書いたビリー・ストレイホーンについては、別の機会に書きます

 モンクが残した曲は70曲とエリントンに比べるとはるかに少ないのですが、録音された数で言うとエリントンについで2番めに多いというデータもあるようです。モンクの曲は、上記Round~のような美しいメロディの曲もあるのですが、他ではあまり聴かれない不思議な跳躍のメロディラインの曲が多く、初めて聴くと違和感を感じるリスナーも多いと思います。

 ところが、ジャズ的な響きに慣れ、特に楽器を演奏するようになってコードが分かってくると、この一種異様な音世界が気持ちよくなってくるという危なさ(?)も秘めています。Blue Monk、Straight No Chaser、Mysteriosoなどブルース(12小節の決まったコードパターンの曲)も多く残しています。

●アドリブ的なメロディー  モンクの曲は、彼自身のユニークなアドリブラインを曲に置き換えた印象が強いですが、クリフォード・ブラウンのJoy Springも、ブラウンの流麗でメロディアスなアドリブフレーズをそのまま曲にしたような感を受けます。この曲のテーマメロディとブラウンのアドリブを聴くと、いかに素晴らしいプレイヤーだったかが分かります。

 Recorda Meは、ジャムセッションで演奏されることも多い人気の曲の一つです。シンコペーションをうまく使って裏拍を強調したメロディーの符割、それをラテンのリズムに乗せた点など、ジャズミュージシャンにしか作れない曲ですね。後半は全音ずつ下がって転調していくのですが、ジョーヘンのアドリブラインを思わせる下降同型メロディーの乗せ方が実に気持ち良いです。今回、初演の音源(Page One収録)を聴いて、改めてこの曲のカッコよさを実感しました。

 Waltz For Debbyは説明の要もないくらい有名ですね。エヴァンスは繰り返し録音していて、いずれも名演です。ソングライターが書いた曲と言われても信じてしまいそうなくらい完成度の高い美しい曲ですね。後に歌詞もつけられ、スウェーデン人歌手のモニカ・ぜタールンドがエヴァンストリオとともに吹き込んで有名になりました。ここではイリアーヌ・イリアスのピアノ弾き語りを音源としておきましょう。

・今回の動画1(エラ・フィッツジェラルドのSolitude) https://www.youtube.com/watch?v=-eImEnIYBNY

・今回の動画2(イリアーヌ・イリアスのWaltz For Debby) https://www.youtube.com/watch?v=d60tS3nG67s

・今回の動画3(ジョー・ヘンダーソンのRecorda Me) https://www.youtube.com/watch?v=opwZVX7ZZ28

◎Lydianからのお知らせ1  8/24の片倉真由子さん(p)のソロ、自分的には超オススメです。現状、ピアノソロはお客様が少ない傾向にあるのですが、片倉さんのソロを一度でも聴いたらイメージが覆されること請け合いです。ピアノだけで(特にベースなしで)説得力のある演奏を2ステージ分飽きさせずに続けるというのは、実はプロにとってもハードルが高いのですが、片倉さんは見事に弾き切ります。

 聴きどころの一つは、調性内のフレーズと調性から出た(アウト)のフレーズを自由自在に行ったり来たりするところです。相手がいる編成によってはこのように弾かないことも当然ありますが、全てを支配できるソロの場合にはこの方法で効果的に弾けるということがあるのでしょう。  Lydianの響きの良い環境では、一音一音が明瞭にお客様の耳に届くはずです。今まで聴いたことのない素晴らしいピアノ音楽です。上記エリントンの組曲もレパートリーにされているので聴けるかもしれません。是非、聴きにいらして下さい。

◎Lydianからのお知らせ2  8/29は、前回大盛況だったジャムセッションの2回目です。ホストは前回同様、外谷東さん(p)、山口裕之さん(b)です。是非、お越しください。18時開店、18時半スタート。参加料:2,200円(税込)+オーダー(前回は2,000円(税別)でしたが変更させて頂きました)。

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