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メルマガ9 ロジャース/ハマーシュタイン

2017 9.16

作曲家・作詞家コンビ2 リチャード・ロジャースとオスカー・ハマーシュタイン

 前回ご紹介したリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートのコンビはハートの死によって終わりましたが、ロジャースはこの後で高名な作詞家・脚本家のオスカー・ハマースタインⅡ世(OscarHammersteinⅡ)とコンビを組み、たくさんの素晴らしい曲を作り続けました。今回はこのコンビと、彼らによって生まれたミュージカル(舞台)/ミュージカル映画の最高傑作「Sound Of Music」について書きます。

◎奇跡のようなミュージカル映画

 1895年生まれでロジャースより7歳年上のハマースタインは、ソングライターの第一世代を代表するジェローム・カーンとコンビを組んでいました。彼らは、最初の本格的なミュージカルとされる「ショウ・ボート(Show Boat)」や、名曲中の名曲「All The Things You Are」などを生み出しました。このコンビについては別の機会に書く予定です。

 ロジャース/ハマースタインのコンビの最初の大きな成功作は「オクラホマ!」です。1943年に初演されたこのミュージカルは、オクラホマ州を舞台にカウボーイと農家の娘との恋の三角関係を描いたもので、ストーリーと挿入歌の良さから2248回というロングラン記録を作りました。日本でも宝塚歌劇団が何度も公演していますね。

 この後も二人は、「南太平洋」、「王様と私」などのミュージカル向けに曲を書きヒットを飛ばし続けます。南太平洋の挿入歌である魅惑の宵など、改めて聴いてもとても良いメロディだと思います。 魅惑の宵(Some Enchanted Evening)/ディーン・マーチン https://www.youtube.com/watch?v=Dy8iLTG5JN4

 彼らの素晴らしい曲によって大ヒットしたミュージカルがサウンド・オブ・ミュージックです。1959年に初演されてロングランとなり、何度も再演されました。そして、1965年にはハリウッドでジュリー・アンドリュースの主演により映画化されて世界的なヒットとなったのでご覧になった方も多いでしょう。まだ見たことがないという方は今すぐネットで探してポチっとしてください。ストーリーも映像も、アンドリュースに代表される出演者も、もちろん音楽もすべてが素晴らしい奇跡のようなミュージカル映画です。

◎コルトレーンと「私のお気に入り」

 ジャズとの関係で言うと、この中のMy Favorite Things(私のお気に入り)が何と言っても有名ですね。音楽的に先鋭化していたジョン・コルトレーンがこの曲をアルバムタイトルとして取り上げ、その後のライブ録音でも繰り返し演奏したことは、当時意外性をもって受け止められたようです。

 コルトレーンは原曲よりコードの動きをかなり減らして、いわゆる一発モノに近い和声で演奏しています。和声がほとんど動かないので、今聴くと長いアドリブが個人的にはちょっと飽きてしまいますが、原曲とはかなり違ったエキゾチックな感じの曲調になっていて、これはこれで面白いアレンジです。コードの動きでなくスケール中心にアドリブするモードと呼ばれる奏法に傾いていた当時のコルトレーンにとっては魅力的なアドリブ素材と映ったのでしょう。コルトレーンが取り上げたことでこの曲がシンガーによってかなり歌われるようになったという面もあります。

 現在でも魅力的に歌うジャズシンガーが少なくありません。この曲を歌う上で重要なのは、巧妙に踏まれている英語の韻(Rhyme)をきれいに発音することだと思います。歌詞の最初のパラグラフを見ると、1行目の最後の単語であるkittens(子猫)と2行目の最後のmittens(手袋)が同じ母音構成になっています。3行目のstringsと4行目のthingsも同じですね。英語の歌詞はこの韻に意味があるので、それをしっかり分かるように発音する必要があります。日本人にとっては低くないハードルですね。

 逆の見方をすると、韻を踏むという制約がある中で、シーンに合う意味があり、なおかつ英語的に美しい歌詞を作るというのは、とても難しいだろうと日本人の自分でも想像できます。作詞家もすごい人達なんです。歌われるシーンは、7人の子供がいるトラップ家に家庭教師として入ったマリアが、雷鳴におびえる子供達に「自分の好きなものを思い浮かべれば、悲しい時、つらい時でも楽になるのよ」と教える場面で す。

My Favorite Thingsの歌詞 http://www.metrolyrics.com/my-favorite-things-maria-lyrics-the-sound-of-musi c.html

ジュリー・アンドリュースが歌うサウンドトラック https://www.youtube.com/watch?v=33o32C0ogVM

 実はこのミュージカルは実在の人物であるマリア・フォン・トラップによる自伝を元に脚本が書かれているのですが、最初に映像化されたのは「菩提樹」という1956年に当時の西ドイツで作られた映画でした。初めてこの映画を見た時には、ほとんどストーリーが同じなのに驚きました。菩提樹→サウンドオブミュージック(舞台)→サウンドオブミュージック(映画)という順番なのですが、菩提樹の方はあまり知られていない映画といってもいいでしょう。

 ほぼ同じストーリーを元に作られているのに、サウンドオブミュージックがはるかに多くの人に愛されいているのは、ロジャース/ハマースタインのコンビが生み出した圧倒的な音楽の力があるからです。

◎ジャズマンお好みはハート時代の曲

 ハートとのコンビ同様に素晴らしい曲を生み出してきたロジャースとハマースタインとのコンビですが、面白いことにジャズマンが好んで演奏するスタンダードということになると、ほとんどハートとのコンビ時代にロジャースが作った曲なのです。

 ハートとの共同作業の時代、シンプルなラブストーリーをハートが洒脱な歌詞で演出し、それにロジャースが美しいメロディーをつけて32小節できっちりまとめたという曲が結果的に多くなっています。ちょっとテンポを速めれば4ビートのベースランニング、シンバルレガートとの相性もよく、何よりロジャースが天才的につけたコード進行に魅せられたジャズマン達が、「このコードでどんなアドリブができるだろうか」と意欲をそそられ、こぞって取り上げたのだと思います。

 これに対してハマースタイン時代は、ミュージカル自体のテーマも、小粋なラブストーリーというより、自然や異国情緒、戦争、家族愛など多岐にわたり、それに合わせて曲も壮大で抒情的なものが増え、ストリングスが主旋律を奏でるのが向いた曲が多くなっていった感があります。こうなるとMyFavorite Thingsのような例外を除いて、アドリブ命のジャズマンは取り上げなくなるのはある意味当然かもしれません。

 ただ、ジャズで演奏される回数が少ないことと音楽としての評価は全く別物です。ジャズを聴く楽しみ方とは違いますが、ロジャースとハマースタインが残した美しい曲を、今でも映画化されたDVDで楽しめるのは素晴らしいことだと思います。

◎Lydianからのお知らせ 1

 ドラムの響き過ぎの改善。ピアノやヴォーカル、管楽器がとてもよく響くLydianですが、残響が長いためにドラムの音が反射して回ってしまうという現象が起きていました。そこで、ドラムの横の壁と天井に高性能の吸音材を貼ったところ、かなり聴きやすくなりました。

◎Lydianからのお知らせ 2

 Lydianではライブのない日にホールとして貸切レンタルしています。発表会や自主ライブなどにお使いください。ジャンルは問いません。レンタル料、機材などは以下のurlに記載しています(Lydianのホームページの右側バナー「貸切 LIVE/ホールレンタル」からも飛べます。 http://jazzlydian.com/hall_rental/

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