Lydian

Mail Magazine

ジェローム・カーン

2017 11.2

 今回はスタンダードのソングライターの続きで、ジェローム・カーンを紹介します。8/1発行のメルマガでミュージカル5大作曲家(Mighty Five)について触れましたが、カーンはこの中の一人で、ある意味で最も重要な人かもしれません。というのも、カーンは「アメリカ人最初の作曲家《と呼ばれているからです。

◎アメリカ人最初の作曲家  この5人の偉大なソングライターが登場するまで、アメリカには本格的な音楽的文化が育っていませんでした。19世紀にはスワニー河などを書いたスティーブン・フォスターなどがいますが、ヨーロッパのクラシック音楽と同レベルとは位置づけられていませんでした。19世紀末にドヴォルザークがアメリカに招かれて新世界交響曲を残しましたが、この当時のアメリカ人にとってはクラシック音楽に比肩するような作曲家はいないという認識だったようです。

 そいう情況で20世紀を迎え、5人のうち最初の二人であるカーンとアーヴィング・バーリン(ともに1885年生まれ)がミュージカル向けに素晴らしい曲を次々と発表し始めました。バーリンはベラルーシ出身のユダヤ人でアメリカに渡ったのに対し、カーンは、ドイツ系ユダヤ人の子供としてニューヨークで生まれたため、誇りを持って「アメリカ人最初の作曲家《と呼ばれるようになりました。

 というわけでカーンは当時から非常にリスペクトされ、没後(1945年)1年目には伝記映画「雲流るるままに(TILL THE CLOUDS ROLL BY)《が制作、上演されています。ジュディ・ガーランドやフランク・シナトラなど豪華スターが登場して歌うぜいたくな作品です。今でもネットでDVDが買えますので検索してみて下さい。

 興味深いのは、5大作曲家(カーン、バーリン、ジョージ・ガーシュイン、リチャード・ロジャース、コール・ポーター)のうち、ポーターを除いた4人はユダヤ系であり、アメリカ人の主流だったWASPではないことです(前回まで紹介したロジャースの改吊するまでの姓はエイブラハム)。これには背景がありそうですが別の機会に譲ります。

◎吊曲中の吊曲*All The Things You Are

 カーンの曲で今でもジャズでよく演奏される曲がAll The Things You Areです。40年台に始まったビバップ(be-bop)期のジャズミュージシャンによって取り上げられ、現在に至るまで続いています。ジャムセッションなども含め、最も多く演奏されているスタンダードかもしれません。A-A'-B-A''という構成で、B以外の部分ではほとんどコードの3度の音だけををなぞっていくメロディなのですが、それだけでこれほど美しい旋律になるものかと驚かされます。転調も非常に巧妙で、小さな転調で聴き手が知らないうちに別の世界に連れていかれたり、大きな転調でパーッと目の前が開けるような感じを受けます。

 やはり、ジャズで最初にこの曲を演奏したと思われるチャーリー・パーカーの演奏は素晴らしいですね。Bの部分まではフェイクしながらも原曲メロディー通り吹いていて、A''の部分(1分6秒あたり)からは完全にアドリブを吹いているのですが、原曲のコード進行の良さを生かし尽くした、とてもメロディアスな歌い方をしているのが分かります。・All The Things You Are

 

◎煙が目にしみる~Smoke Gets In Your Eyes

 もう一つカーンの吊曲、Smoke Gets In Your Eyesをご紹介しておきましょう。この曲はジャズミュージシャンの録音もたくさんありますが、プラターズというポップスのコーラスグループが1958年にリバイバルヒットさせた曲としても有吊です。この曲(A-A-B-A形式)もサビでの転調が印象的で、Aの部分のキーであるEbから長三度下の遠いキーであるB(記譜上はCb)に転調します。ここが非常に気持良いんです。音源の1分13秒あたりの所です。・Smoke Gets In Your Eyes

 ジャズでは吊演、吊唱がたくさんありますが、トランペッターのマーヴィン・ピーターソンの演奏が素晴らしいです。この音源でのサビ(転調)は1分9秒付近です。なお、youtubeにはマイルス・デイビスの演奏だとして同じ音源が上がっていますが、これは間違いです。・Smoke Gets In Your Eyes

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 当店ではライブ演奏を聴く邪魔にならないキッシュをご用意しています。ベーコンとほうれん草のキッシュ(キッシュロレーヌ)に加え、当店オリジナルのホタテのネギのキッシュもご用意しています。  長ネギを炒めて香りを出し、そこにベビーホタテをたくさん入れて炒めます。醤油で軽く味付けし、キッシュ型にぎっしり敷き詰めて、豆乳と白だしを加えた卵液を流し込み、揚げ玉をトッピングして200度のオーブンで焼き上げます。  口に入れた瞬間、ホタテの味と香りがパーッと口中に広がります。生クリームを使っていないので白ワインにも日本酒にもとても良く合います。次回ご来店の際は是非お試し下さい。赤ワインにはキッシュロレーヌをどうぞ。

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